アメリカ合衆国による対ベネズエラ軍事行動を非難する

現代の国際社会は、主権を有する国家間の対等な関係を前提として成立している。ある国が武力の威嚇や行使によって、他国の元首を拘束し、自国の国内司法で裁くことは、国家主権に対する重大な侵害である。

ベネズエラのマドゥロ政権は、政権に批判的な政治活動家を拘束するなどの人権侵害をおこなっており、政権の民主的な正統性についても疑義がもたれている。また、多数の国民が国外に難民として流出するなどの、人道的危機状況を生み出していることも確かである。しかし、どのような政権であっても、外から軍事介入をおこない、強制的に指導者を交代させることは、平和的な手段で、正義と国際法にもとづいて解決をはかることに徹するべきとする、世界秩序の理念を毀損する行為である。合衆国は昨年来、ベネズエラからの麻薬密輸を取り締まると称して船舶を攻撃し、乗組員を殺害してきたが、これも国際法の違反が指摘されている。

とりわけ歴史の研究や教育に携わるわれわれが危惧することは、今回の合衆国の行動が、過去に同国がおこなってきた軍事介入を反復するだけでなく、中南米諸国を対等ではなく、自国の勢力圏における従属的な存在と見なすような世界観を復活させるトランプ政権の試みを具現した行為でもあるからである。第二期政権発足以来、ドナルド・トランプ大統領やピート・ヘグセス国防長官はたびたびモンロー主義の復活を唱え、これは昨年末に発表された国家安全保障戦略にも盛り込まれた。20世紀初頭のセオドア・ルーズベルト大統領による棍棒外交(くしくも、1902年からのベネズエラ危機を契機とした)をはじめ、西半球における合衆国の優位を主張するモンロー主義の発想によって、中南米への侵略と支配が正当化されてきた歴史がさらに繰り返されることが憂慮される。このような勢力圏の発想が、過去に大きな世界大戦につながり、たくさんの人的・物的損失をもたらしたことを、われわれは想起するべきである。

われわれは合衆国の行動を断固として非難するとともに、ベネズエラ国民が自らの平和と幸福について、自分たちで決めることを支持する。

2026年1月9日

歴史学研究会委員会