アメリカ合衆国とイスラエルによるイランに対する先制軍事攻撃を非難し、相互に戦闘の中止を求めるとともに、日本政府に国際法を尊重する毅然とした態度表明を求める

 2026年2月28日、アメリカ合衆国とイスラエルはイランに対する空爆を開始した。これは、いかなる国の領土保全、政治的独立に対しても武力によって威嚇し、武力を行使することを禁じた国際連合憲章第2条第4項に明確に違反するとともに、国際紛争は平和的手段によって、かつ、国際法の原則に従って対処されるという現在の国際社会の共通理解をもないがしろにするものでもあり、断固として非難されるべきである。両国は、国連安全保障理事会の場をはじめとする国際社会に対して、攻撃が正当化されるいかなる説得的な根拠も示していないだけでなく、それを試みようともしておらず、こうした姿勢は、悲惨な戦争を回避するために人類が積み重ねてきた真摯な努力を無に帰しかねないものである。攻撃開始後2週間あまりの間に、多くの民間インフラや学校等においても甚大な人的・物的被害が生じている。両国は軍事行動を即座に中止し、攻撃の根拠を十全に説明すべきである。

 イランもまた、この攻撃を受けて広範囲に行っている周辺諸国や海洋・船舶に対する攻撃をすぐさま停止しなければならない。民間施設への攻撃は、反撃や自衛という理由によっては決して正当化されえない。イラン政府は、核開発等をめぐる国際社会の懸念を払拭する努力を行うとともに、自由とさらなる民主化を求める国内の声を真摯に受け止め、暴力的事態の回避に努めるべきである。

 日本政府は、今回のアメリカ合衆国とイスラエルによる軍事行動について、国際法を尊重する毅然とした態度をいまだに表明していない。恒久の平和を念願し、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼を寄せ、国連憲章の尊重と法の支配を旨とする国として、両国の行動を正しく批判し、法に基づく国際秩序の安定のために力を尽くすべきである。

 歴史学研究会は、日本における歴史学研究の推進者として、歴史における戦争と紛争解決、国家間・地域間の不正義とその是正について、つねに問いを発しつづけ、学問的手順に誠実に従いながら、そして、社会と対話しながら最適解を求めつづけている。その立場からも、今回の軍事行動が、人類が平和共存共生のために築き上げてきた国際法秩序と、そのための連綿たる営為に唾するものであり、世界の将来に対する悪しき転換点となりかねないことを強く危惧する。

 アメリカ合衆国、イスラエル、イランがただちに戦闘を中止し、国際法に基づく平和的手段による国際紛争の解決という理念に立ち返ること、関係諸国そして日本政府はそれを強く支持し推進することを求める。

2026年3月16日

歴史学研究会委員会

アメリカ合衆国による対ベネズエラ軍事行動を非難する

 現代の国際社会は、主権を有する国家間の対等な関係を前提として成立している。ある国が武力の威嚇や行使によって、他国の元首を拘束し、自国の国内司法で裁くことは、国家主権に対する重大な侵害である。

 ベネズエラのマドゥロ政権は、政権に批判的な政治活動家を拘束するなどの人権侵害をおこなっており、政権の民主的な正統性についても疑義がもたれている。また、多数の国民が国外に難民として流出するなどの、人道的危機状況を生み出していることも確かである。しかし、どのような政権であっても、外から軍事介入をおこない、強制的に指導者を交代させることは、平和的な手段で、正義と国際法にもとづいて解決をはかることに徹するべきとする、世界秩序の理念を毀損する行為である。合衆国は昨年来、ベネズエラからの麻薬密輸を取り締まると称して船舶を攻撃し、乗組員を殺害してきたが、これも国際法の違反が指摘されている。

 とりわけ歴史の研究や教育に携わるわれわれが危惧することは、今回の合衆国の行動が、過去に同国がおこなってきた軍事介入を反復するだけでなく、中南米諸国を対等ではなく、自国の勢力圏における従属的な存在と見なすような世界観を復活させるトランプ政権の試みを具現した行為でもあるからである。第二期政権発足以来、ドナルド・トランプ大統領やピート・ヘグセス国防長官はたびたびモンロー主義の復活を唱え、これは昨年末に発表された国家安全保障戦略にも盛り込まれた。20世紀初頭のセオドア・ルーズベルト大統領による棍棒外交(くしくも、1902年からのベネズエラ危機を契機とした)をはじめ、西半球における合衆国の優位を主張するモンロー主義の発想によって、中南米への侵略と支配が正当化されてきた歴史がさらに繰り返されることが憂慮される。このような勢力圏の発想が、過去に大きな世界大戦につながり、たくさんの人的・物的損失をもたらしたことを、われわれは想起するべきである。

 われわれは合衆国の行動を断固として非難するとともに、ベネズエラ国民が自らの平和と幸福について、自分たちで決めることを支持する。

2026年1月9日

歴史学研究会委員会