歴研シンポジウム

2017年

現代歴史学の新たな地平を求めて ―『第4次 成果と課題』再考―


日時:2017年12月2日(土)13:00~17:30(開場12:30)
会場:早稲田大学戸山キャンパス 36号館681教室
https://www.waseda.jp/top/access/toyama-campus
報告者
大門正克 現代歴史学を串刺しにする
 -『第4次 成果と課題』の構想と発刊をふまえて-
松原宏之 文化からたどりなおす現代歴史学
 -ジェンダー、身分、政治経済-
若尾政希 いまなぜ歴史実践か
コメント 加藤陽子、仲松優子、浅田進史

資料代 500円(事前申込不要)

(開催主旨)
 2017年5月、歴史学研究会は『第4次 現代歴史学の成果と課題』を刊行した。15年ぶりとなる『成果と課題』は、以下の全3巻から構成される。第1巻「新自由主義時代の歴史学」は、この15年間の歴史認識の変化を集約し、歴史学の方法的可能性を展望するだけでなく、その課題と隘路をも示したことに特徴があるだろう。第2巻「世界史像の再構成」は、1990年代以来、日本の歴史学界を席巻してきた構築主義を克服しつつ、その最良の遺産を継承しながら新たな動態的歴史像を模索した。第3巻「歴史実践の現在」は、史料・方法・叙述のほか、研究・教育を含む一連の社会的営為を「歴史実践」と考え、いまなぜ歴史実践が必要なのかを問いつづけた。
 さて、それぞれに個性的な3巻を総合的に鳥瞰するとき、その先にいったいなにが見えてくるのだろうか。私たち歴史学研究会委員会は、これら3巻の向こうに広がる地平を展望すべく、歴史学研究会シンポジウム「現代歴史学の新たな地平を求めて―『第4次 成果と課題』再考―」を企画した。このとき、導きの糸となるのは、独自の視点から3巻を貫通して把握しようとする以下の三報告である。大門正克は、『成果と課題』編集委員の立場から、3巻を串刺しにする総括的な報告を行う。松原宏之は、第1巻の自著「カルチュラル・ターン以後の歴史学と叙述」のなかで触れることができなかった対象、たとえばジェンダーについてどうみるかを皮切りに、認識論的かつ方法論的議論をさらに拡張していく。最後に、若尾政希は「いまなぜ歴史実践なのか」という問いを軸に、第1巻・第2巻で表明されつつある歴史学の新たな展開と第3巻の歴史実践論とがいったいどのようにかかわり、どう異なるのか、そして、どのように結びつくのかを論じる。
 これらの三報告に対して、全3巻を踏まえた近現代史研究の視点から加藤陽子、近世国制・身分・ジェンダーの観点から仲松優子、若手研究者問題にも取り組む浅田進史の三氏にコメントをいただく。これによって、歴史認識・歴史叙述・世界史像・歴史実践を総合的に論じる「歴史学の場」をつくることができるだろう。

2014年

歴史学の課題としての戦後日本/平和主義
―集団的自衛権問題を見すえて― 


日 時:2014年12月13日(土) 13時30分~17時30分
会 場:慶應義塾大学三田キャンパス 西校舎527教室

http://www.keio.ac.jp/ja/access/mita.html
※西校舎は上記サイトの「キャンパスマップ」中、12番の建物

報 告
 油井大三郎 世界史に逆行する集団的自衛権論の陥穽
 鳥山  淳   自治と復興をめぐり揺れ動く、占領下沖縄の「平和」
 村井章介   境界の蘇生を求めて-日本前近代史から-
 資料代:500円(事前申し込み不要)

開催主旨
 2014年7月1日、第二次安倍政権により、集団的自衛権を容認する閣議決定が強行された。当会委員会としてはこれに先立つ5月24 日に、声明「憲法解釈の変更による集団的自衛権の容認に反対する」を発表し、反対の意思を表明した。同声明では、集団的自衛権の行使は国際法上の戦争事態 にあたり、軍隊として交戦活動をおこなうに他ならないこと、〝戦争ができる国づくり〟の一環としてこれをとらえる必要があること、解釈改憲をめぐる安倍政 権の手法は、強引かつ恣意的である点でかつてない危うさがあることなどを指摘した。こうした安倍政権の策動は、日本国憲法の根幹である平和主義に対する挑 戦であり、また、立憲主義の原則を否定するものに他ならない。本シンポジウムでは、そうした集団的自衛権の諸問題をふまえたうえで、歴史学の立場から、あ らためて現状を見すえる視座を探りたい。
 歴史学研究会は、この間、眼前にある状況を見すえた企画を継続的におこなってきた。2013年12月15日には、シンポジウム「「慰安婦」問題を/から 考える」を日本史研究会と合同で開催し、2014年3月30日には総合部会例会「法と人権の歴史を再考する」を開催した。四月二八日には歴史科学協議会・ 歴史教育者協議会と「四月二八日の意味を考え辺野古への基地移設に反対する歴史学関係者の集会」を共催した。そして、5月24日には大会全体会で「いま、 歴史研究に何ができるかⅡ」を、翌25日には特設部会「資料保全から歴史研究へ」を開催した。これらは、現代社会に対して歴史研究が果たす役割は何かを、 真摯に問い直そうとする、現実と歴史学のかかわり方=アクチュアリティを考える取り組みであった。
 以上の経緯をふまえながら、今回は、眼前に浮上してきた集団的自衛権問題と表裏の関係にある、戦後日本が標榜してきた「平和主義」に照準を合わせて議論 したい。そのことはまた、「戦後日本」を再検討することにもつながるだろう。その際、とりわけ以下の三つのポイントを念頭に置いて、検討を加えていきたい と考えている。
 第一に、平和主義は安倍政権がまさに「脱却」しようとしている、「戦後レジーム」の中心に据えられてきたものであり、集団的自衛権にかかわる問題の集約 点である。その平和主義を広く歴史的文脈のなかでとらえなおす作業をとおして、東アジアの緊張感をさらに高める現政権の動きに対して、それとは異なる平和 への展望を見出したい。
 第二に、侵略戦争への反省の上に出発した戦後の日本が標榜してきた平和主義が、現実にはどのような関係のなかで「成り立って」いたのか。世界、あるいは 東アジアとの連関のなかで、歴史的に検証したい。
 第三に、ここでいう戦後日本は、単なる歴史研究の対象ではない。そのあゆみのなかに、他ならぬ歴史学もあったことに留意したい。一人ひとりの研究者が、 眼前にある同時代的な現実と向きあい、問題意識を研ぎ澄ませたり、あるいは現実の影響を極力排そうとしたりしながら、積みあげてきた戦後の歴史学のあり方 についても問いなおしたい。
 以上のような問題意識から、本シンポジウムでは、油井大三郎・鳥山淳・村井章介の三氏に報告をお願いした。
 油井氏は、近年、第一次世界大戦後の国際社会における、戦争の違法化と国際機関の発展について論じてこられた。それをふまえ、第二次世界大戦後に世界の 中心としてあったアメリカとの関係のなかで日本をとらえ、アジア太平洋戦争をめぐる日米間の記憶の壁について論じていただく。
鳥山氏は、「自治」と「復興」の観点から戦後の沖縄の歩みを検討されてきた。沖縄は、つねに戦後日本/平和主義の矛盾の焦点であり続けてきた。鳥山氏には 沖縄の歩みに即して話していただく。そこから見えてくる戦後日本/平和主義はどのようなものなのか、一緒に考えたく思う。
 村井氏は、日本中世の境界・境界認識について、積極的な研究を展開されてきた。これまでのご自身の研究成果をふまえて、幅広い時間軸のなかで、偏狭なナ ショナリズムが幅をきかせつつある今日の状況をとらえるための視座を提供いただく。
 以上、専門とする時代や地域の異なる三氏の報告によって、戦後日本/平和主義を、時間的・空間的な広がりのなかで多角的にとらえ、議論をひらいてゆくこ とを企図している。当日はぜひ会場にお越しいただき、討論の輪に積極的に加わっていただきたい。