総合部会

2018年

天皇の身体と皇位継承-歴史から考える- 

日時:2018年4月14日(土) 13時30分~17時30分(開場13時)
場所:東京大学(本郷キャンパス)法文2号館二階一番大教室
報告者
 荒木敏夫 「譲位」の誕生          
 池 享  「譲位」の中断と天皇の立場  
 藤田 覚 近世の皇位継承
 河西秀哉 近現代の天皇制と天皇-制度と個人のはざま-
司会 加藤陽子

参加費:500円(事前申し込み不要)

開催主旨
 現天皇に退位の意向があることを伝えた2016年7月13日の第一報は、日本社会に驚きを持って迎えられた。同年8月8日には、天皇自身が国民に向けたビデオメッセージを発し、高齢による体力の衰えから象徴としての務めを果たすことが難しくなっていること、また国事行為や象徴としての行為は摂政では難しいことから終生在位ではない事実上の譲位の希望を述べた。この天皇メッセージに対して、各社の世論調査の数値からは国民の大多数が天皇の意向を好意的に受け止めたことが明らかになった。
 天皇の地位は憲法によって「日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であつて、この地位は、主権の存する日本国民の総意に基く」(憲法第一条)と定められ、皇位もまた「世襲のものであつて、国会の議決した皇室典範の定めるところ」(憲法第二条)に従って継承されると定められている。その皇室典範は「天皇が崩じたときは、皇嗣が、直ちに即位する」(典範第四条)と定める。「国政に関する権能を有しない」(憲法第四条一項後段)天皇が、しかし同時に、象徴としての務めを長年果たしてきた生身の人間でもある天皇が、現行の法律である皇室典範の定めとは異なる処遇を求めた事態は、天皇のふるまいに含まれる政治性とともに、終生在位という制度の持つ非人間的側面を改めて浮き彫りにした。
 内閣は「天皇の公務の負担軽減等に関する有識者会議」において論点の集約を図り、国会はといえば法案受理から20日という異例の早さで、「天皇の退位等に関する皇室典範特例法」を成立させてしまった。法案の成立過程をみても、国民の総意に基づいた象徴としての天皇の地位の変更が、適正な手続きでなされたということは到底いえない。近い将来、憲法と皇室典範の規定を両立しうる皇嗣の存在がなくなる事態もやってくるだろう。
 このような現状認識を前提として、今回の総合部会例会では、日本の歴史上の天皇と天皇制を、身体と継承の観点からふりかえってみたい。ここにいう身体とは、王には物理的肉体とは別に、永続性をもち次代の王に継承される身体(永続する国家を象徴する王の不死の身体)があるとの、E・H・カントーロヴィチの考察とその後の研究史をふまえたものである。
 いうまでもなく、前近代は天皇のあり方そのものが近現代とは大きく異なった。「生前譲位」の嚆矢は、古代国家形成期の大王皇極に求めることができる。それ以前の大王は終身制にとらわれていた。中国から律令が継受されて国家の支配体制が成立するものの、生前譲位による太上天皇制は日本独自の存在であった。太上天皇制は、平安時代になると院の創出母胎となった。またこの時期輩出された女帝は、生身の天皇に求められていたものがジェンダーを越えたものであったことを端的に物語たる。さらに、天皇の急死による皇位の空白期を作らないために「如在之儀」というシステムまで創出された。鎌倉時代に端を発する天皇家の分裂が、その後も長く尾を引いたのは周知のことであろうし、その後の天皇たちは数々の変転を経験することを余儀なくされた。長期的にみれば、幕府・武士との関係性によって、天皇・朝廷は政治的な主体性を喪失していったが、その一方で、天皇・朝廷が存在し続けたことは、何らかの意味で彼らが必要とされ続けたことを物語ってもいる。
 教科書で馴染みのある時代区分でいえば、古代・中世・近世・近代それぞれの時代にあって天皇はいかなるものと認識されていたのか。また、他の権力との関係性はいかなるものであったのか。各時代にあって研究史上に明らかにされてきたことは自明のように見えても、他時代のことまで手に取るようにわかっている者は歴史研究者でも少ないと思われる。今回は、荒木敏夫、池享、藤田覚、河西秀哉の四氏に、特に、皇位継承問題を中心に、近年の研究成果も踏まえた上で論じていただく。各時代にわたる最新の天皇論を展開することによって、天皇とその歴史について理解を共有し、より柔軟性を持った新たな議論の構築を目指すこととしたい。


2017年

総合部会例会のお知らせ

憲法のゆくえ、歴史から考える -危機に瀕する立憲主義-

日 時 2017年1月21日(土)13:30~17:30
会 場 立教大学池袋キャンパス8号館8201教室
    (池袋駅西口より徒歩約10分)
報 告 高見勝利「昭和天皇と新憲法制定」(仮)
    渡辺治「憲法改正をめぐる戦後史の展開と安倍改憲の歴史的位置」(仮)
    佐々木紳「トルコ近現代史のなかの立憲主義」(仮)
資料代 500円(事前申込不要)

開催主旨
 自民党は1955年の結党以来、党是として改憲を掲げ、野党時代の2012年には「日本国憲法改正草案」を発表しています。これが、天皇を元首として位置づけ、国家権力を強めて国民を統制し従わせようとする内容であることは周知の事実です。そして、2016年7月10日の参議院議員選挙の結果、衆参両院で「改憲勢力」が三分の二を超え、安倍晋三内閣はいよいよ憲法改定へ向かいつつあります。「改憲勢力」のなかには「加憲」の主張などもあって中身は同質ではなく、また民進党などにも改憲論者がいて単純には捉えられませんが、「改憲」の動きは本格的に始まろうとしています。
 また、2016年8月8日には明仁天皇が「生前退位」を強くにじませたビデオメッセージを発表し、皇室典範の改定もからんだ議論が起こっています。この問題は取りも直さず、日本国憲法の象徴天皇制のあり方に直結するものです。
 こうした状況に鑑みると、現在、国と国民との関係が揺らぎをみせており、象徴天皇制の位置づけも問われているなかで、憲法の問題を基軸に立憲主義・国民主権について改めて考えることが求められていると言えるでしょう。そこで今回の総合部会例会では、立憲主義とは何かを踏まえつつ、「アメリカからの押しつけ」論に対して日本国憲法成立の状況はどうだったのか、その後一度も憲法が改定されてこなかった事情はどのようなものだったのかを確認し、さらに日本ばかりでなく、世界史的視野からも憲法について考察することで、現在の「改憲」の意味を理解し、考える基礎としたいと思います。研究者ばかりでなく、学生・院生をはじめ、多くのみなさんの参加を期待しています。


2016年

沖縄から見た「本土」、そして世界

日 時:2016年3月5日(土)13:30~17:30
会 場:日本大学経済学部本館3階36教室
  (JR・地下鉄水道橋駅より徒歩5分、地下鉄神保町駅より徒歩9分)
  *会場案内図:http://www.eco.nihon-u.ac.jp/about/maps/
報告:
 田名真之 近世琉球の位置づけ-日中の眼差しと琉球の自己認識-
 高江洲昌哉 近代沖縄の歴史経験と変遷する歴史像
 櫻澤 誠  沖縄現代史のなかの「島ぐるみ」の系譜

資料代:500円(事前申込不要)

【開催主旨】
 戦後、長らくアメリカ合衆国の軍政下・施政権下に置かれた沖縄では、「本土復帰」後も広大な米軍基地が存在し、さまざまな問題が生じている。近年では普天間基地移設にかんして、名護市辺野古への移転を進めようとする日本政府と、それに反対する沖縄県・県民との対立が深刻化し、抜き差しならない局面に至っている。その背景には、尖閣諸島問題で中国に対抗しようとする日本政府の防衛戦略や、アメリカ合衆国の世界戦略の問題もある。こうした現況をみてみると、沖縄の人々と、「本土」あるいは関係諸国との認識の差異を感じないわけにはいかない。沖縄の人々が自分たちをどのようにとらえ、何を望み、「本土」あるいは世界をどのように見ているのかに改めて注目することが、こじれた現在の状況を打開するうえで必須のことではなかろうか。
 近世の琉球王国についても、「日中両属」の形をとりながらも主体的な対応や国家運営を行ったこと、内部にさまざまな矛盾を抱えていたことなどは、近年の研究が明らかにしてきている。今回の総合部会例会では、沖縄の人々がどのように自己を認識しつつ自らの生存と繁栄を求めて行動し、また「本土」や世界をどのようにみてきたのか、「本土」側の沖縄認識や、他国による沖縄の位置づけとの差異はどうであったのかについて、近世から近現代にかけて歴史的に再考察してみたい。もちろん、沖縄も「本土」も決して一枚岩ではなく、単純化して論じることはできないし、また単に沖縄対「本土」の構図だけでなく、沖縄が東アジア地域の中で、さらには世界の中でもつ歴史的意味をふまえて考察すべきであろう。こうした点に留意しながら、沖縄の実像を改めて歴史的に考えることによって、現在の問題の本質を理解する一助としたい。



2015年

  史料の面白さ、歴史教育の現場
  ―『世界史史料』と『史料から考える 世界史20講』―


報告者 鈴木茂 米山宏史 (報告タイトル・要旨は下をお読み下さい)
日時:2015年1月31日(土)14:00~18:00
場所:青山学院大学青山キャンパス ガウチャーホール5階第13会議室
 JR等「渋谷駅」より徒歩10分、東京メトロ「表参道駅」より徒歩5分
アクセスマップ http://www.aoyama.ac.jp/outline/campus/access.html
キャンパスマップ http://www.aoyama.ac.jp/outline/campus/aoyama.html

資料代 500円(事前申し込み不要)

開催主旨
 歴史学研究会編『世界史史料』(岩波書店、2006~2013年)全12巻が完結しました。この姉妹編ともいうべき、歴史学研究会編『史料から考える 世界史20講』(岩波書店、2014年)も刊行されました。『史料から考える 世界史20講』には『世界史史料』に掲載された史料も使用されています。また、本誌でも特集「史料の力、歴史家をかこむ磁場―史料読解の認識構造―」 (I)(II)(III)が組まれました(『歴史学研究』912~914号、2013年11月~2014年1月)。
 歴史学研究会では、これらをもとに総合部会例会を開催して、歴史の面白さの鍵となる史料が、とくに教育現場でどのように使われているのかを検討してみた いと思います。高校や大学の初年次教育、あるいは市民向け講座等で、いま世界史史料がどのように使われているのか、あるいは、これからどう使ったらよいの か、について、具体的な授業実践の紹介をつうじて考えてみます。報告を鈴木茂さんと米山宏史さんにお願いしました。報告要旨は以下の通りです。

報告要旨

鈴木茂 高大連携の視点から見た大学の歴史教育―「ラテンアメリカ史概説」の実践 報告―
 学部改組に伴って、新入生向けにラテンアメリカ全体の歴史の授業を担当するようになって3年になる。受講者数も毎年100名近くにのぼり、高校「世界 史」と大学での歴史研究の接続をめぐる課題もいくつか見えてきたように思われる。高校世界史教育に関するアンケート調査も踏まえながら、「史料から考え る」歴史教育の現状と課題を考えてみたい。

米山 宏史 『世界史史料』を読み解く高校世界史学習の試み
 世界史学習には本来、「過去との出会い」や「世界との遭遇」など豊かな学びの可能性が秘められている。しかし、受験を意識した暗記型の授業や限られた授 業時間数での通史学習の困難など多くの課題に直面している。また近年、グローバル化の進展を背景に歴史的思考力の育成が求められている。生徒の主体的な世 界史認識の形成をめざして取り組んだ『世界史史料』の読解を用いた授業実践を紹介し、 史料を読み解く世界史学習の有効性と課題について考えたい。