新刊

『「戦前歴史学」のアリーナ ――歴史家たちの一九三〇年代』

歴史学研究会編・加藤陽子責任編集
東京大学出版会 2023年6月7日刊行 本体2,500円

戦後歴史学が批判すべき対象としていた「戦前」の歴史学について、その出発点を1930年代に生まれた新しい歴史学の潮流のなかに見出す。多様な歴史学が興隆するなか、そこで生まれた歴史学研究会と、それを牽引した歴史家たちがたどった戦中・戦後も射程に入れて、現代の歴史学が切りひらく視座を提示する。

まえがき(加藤陽子)

 一九三〇年代の歴史学の「刷新」と黎明期の『歴史学研究』(加藤陽子)
 【コラム1】 確かな「一隅」を築く試み(戸邉秀明)

 「宮崎市定」の誕生――一九三〇年代の軌跡(井上文則)

 一九三〇年代の歴史系学会と史学史ブーム(佐藤雄基)
 【コラム2】 昭史会の野郎ども(木下竜馬)

 社会経済史学会の創立と一九三〇年代前後の社会経済史研究(馬場 哲)

 戦前東洋史学の展開と歴史学研究会の創立者群像(小嶋茂稔)
 【コラム3】 一九三〇年代の『歴史学研究』にみる地方郷土史家へのまなざし(古畑侑亮)

 歴史学研究会と二つの皇国史観――平泉澄・吉田三郎を中心に(昆野伸幸)
 【コラム4】 「戦前歴史学」における軍事史・戦争史研究の一側面――原種行の研究を例に(三澤拓弥)

 両大戦間期フランス歴史学界における危機と刷新――L.フェーヴルの視点から(舘 葉月)
 【コラム5】 黎明期の西洋史部会――その課題と取り組み(十川雅浩)

 「左派外交史学」の曙光――一九三〇年代日本のマルクス主義史家たち(前田亮介)

あとがき (下村周太郎)

『「人文知の危機」と歴史学 ――歴史学研究会創立90周年記念』

編集・発行:歴史学研究会、発売:績文堂出版
2022年12月18日刊行 本体1,800円

1932年に創立された歴史学研究会の歩みを振り返り、現代社会における人文知のあり方の劇的な変容の要因を座談会と資料から問う。

第Ⅰ部 人文知の危機
 座談会 人文知の危機 
     宇山智彦 隠岐さや香 久保亨 久留島典子 佐藤大介   
     加藤陽子 佐々木真 松原宏之 下村周太郎
 座談会「人文知の危機」を読み解くために(加藤陽子) 

第Ⅱ部 一九八〇・九〇年代の歴研と歴史学
 座談会 一九八〇・九〇年代の歴研と歴史学 
     加藤博 木畑洋一 小谷汪之 若尾政希
     加藤陽子 佐々木真 下村周太郎
 寄稿
  一九八六~一九八九年度の「歴研体験」と私(吉田伸之)
  一九八〇・九〇年代の〈歴史学研究会と私〉をめぐる試行錯誤(大門正克)
  一九九〇年代後半の歴史学研究会(藤田覚)

第Ⅲ部 資料
 歴史学研究会年表 2012年~2022年
 歴史学研究会関係出版図書一覧 201212月~2022年12月
 委員会組織変遷表 1932年~2022年

お詫びと訂正

この度は弊会の本をご購入いただきましてありがとうございました。
『「人文知の危機」と歴史学 ――歴史学研究会創立90周年記念』におきまして、「歴史学研究会年表」に誤りがありました。
大変ご迷惑をおかけいたしました。心よりお詫びして訂正申し上げます。
誤りのあった箇所は、186‐188頁に記載されている2016年度大会の内容です(2015年度大会の内容が重複して記載されていました)。
2016年度大会の正しい内容は、「2016年 大会の正しい内容」(PDF)を用意いたしましたので、下記よりダウンロードくださいますようお願いいたします。

『アカデミズムとジェンダー ――歴史学の現状と課題』

歴史学研究会編
有信 真美菜・大江 洋代・清水 領・芹口 真結子・高野 友理香・寺本 敬子・三枝 暁子 著
績文堂出版 2022年5月30日刊行 本体1,800円

ジェンダー平等はもはや「女性の問題」ではない!
キャリア形成、結婚・出産の壁、さまざまなハラスメント――女性研究者が抱える「生きづらさ」の背景をアンケート調査・資料などをもとに明らかにするとともに、男性研究者を交えた座談会を収録し、困難な状況を共に克服する方途を探る。

刊行にあたって

第1部 女性歴史学研究者の現在
 第1章 女性研究者のキャリア形成をめぐる現状と課題
  はじめに
  1 大学・大学院におけるジェンダーをめぐる壁
  2 非常勤講師のおかれている現状
  3 女性の「研究時間」をめぐる現状
  4 再生産労働と女性の「研究時間」
  5 ハラスメントをめぐる現状
  おわりに――現実と「政策」のはざまで 
 第2章 結婚・出産・育児と女性研究者
  はじめに
  1 女性研究者の就業と結婚・出産・育児
  2 世帯形成と妊娠・出産の壁
  3 育児支援とその不足
  4 女性と家庭をめぐるジェンダー・バイアス
  おわりに
 第1部 おわりに
第2部  歴史学に参入する女性研究者の歴史
 第1章 女性が歴史学を研究するということ――西洋編
  はじめに
  1 科学知における女性観、「近代」における男女の性的役割分担
  2 高等教育への女性の参入
  3 歴史の周辺にいる女性
    ――歴史家の補助職としての女性、正規職に就いた女性
  4 歴史学における女性の少なさと、その背景
  5 一九六〇年代後半のフェミニズム運動と女性史の発見
  6 女性たちの歴史家という職業への参入運動
  おわりに
 第2章 女性が歴史学を研究するということ――日本編
  はじめに
  1 制度的障壁を乗り越えて――戦前
  2 制度的障壁の撤廃と女性歴史学研究者の誕生――戦後
  3 女性歴史学研究者による地位向上運動――一九七〇年代
  おわりに
第3部 座談会――歴史学におけるジェンダー平等を展望する
 はじめに
 1 自己紹介
 2 なぜ座談会を開くのか
 3 女性歴史学研究者のキャリア形成をめぐって
 4 ハラスメントをめぐる問題
 5 史学史のなかの女性とジェンダー史のいま
 6 分断をどう乗り越えるか
 おわりに――座談会を終えて
結びにかえて

『「歴史総合」をつむぐ ――新しい歴史実践へのいざない』

書影

歴史学研究会 編
東京大学出版会 2022年4月28日刊行 本体2,700円

歴史の学びはどう変わるか――
高校の新科目をめぐって歴史研究者たちが考える実践と
現場から考える新しい授業のかたち

新しく高等学校でスタートする「歴史総合」の授業で、歴史の学び方は大きく変わる。「歴史の扉」をはじめとする大項目に対応した実践を、具体的なテーマで史料も提示しながら展開する。本書の事例を学習の現場でどう活用するか、授業づくりへのアイデアも提起し、これからの歴史への展望をひらく。

はじめに──「歴史総合」と歴史研究
[歴史の扉]
①史実の作られ方・歴史像の形成
(第1講)吉田松陰の虚像を剥ぐ(須田 努)
1. 歴史修正主義と反・知性主義/2.「思想家」という思い込み /3.「教育者」という情念/4. 松陰とは何者であったのか
②「豊かな生活」の成り立ち
(第2講)飢餓と飽食の時代(藤原辰史)
1. 飽食と文明/2. 飢餓を思い起こせ/3. 誰かを計画的に飢えさせる政策/4. 国際問題としての飢餓/5. 肥満と飢餓
(第3講)飽衣の時代(杉浦未樹)1.「使い捨て」の時代の先は/2. 1枚の服に隠されたグローバルな旅/3. 最近30年間に急拡大した古着交易/4. コットン(綿)──世界史を動かした繊維/5. 一つ買ったらほかも買いたくなる──ディドロ効果/6. 低賃金を礎とする生産──「貧しさ」の連鎖/7. 現在地──新たな豊かさを探して
③「日本」の枠組み
(第4講)占領と沖縄基地問題(鳥山 淳)
1. 基地問題の原点としての沖縄戦/2. 基地の拡充と立退き/3. 結束した沖縄の人々/4. 米軍基地の「シワ寄せ」という問題 /5. 裏切られた「祖国復帰」/6.「県内移設」が意味するもの
(第5講)アイヌの人々への「同化」政策(谷本晃久)1. 同祖と同化/2. 劣位の編入/3. 近代の「同化」政策

[近代化と私たち]
④女性の歴史
(第6講)女性の政治参加(大江洋代)
1. 女性のいない立憲制/2. 明治期の婦人参政権獲得運動/3. 大正期婦人参政権獲得運動/4. 昭和戦前戦中期における婦人参政権獲得運動/5. 敗戦と婦人参政権の実現/6. 戦後女性政治家の群像/7. 現在地──なぜ女性政治家が増えないのか
(第7講)主婦と働く女性(佐藤千登勢)1.「新しい女」の登場/2.「幸せな主婦」像/3. 家庭か仕事か/4. 理想的な家族像の形成/5. 第二波フェミニズムの興隆/6. 現在地
⑤産業革命
(第8講)産業革命はなぜ「革命」と呼ばれるのか(長谷川貴彦)
1. 革命論の系譜/2. リハビリテーションの解釈/3. 「大分岐」に向けて
(第9講)時間認識の変化(橋本毅彦)1. フランクリンと時間/2. 時計の起源と発展/3. 18世紀における時計の普及と時間規律/4. 交通の発展と時計/5. 日本の近代化と定時法の導入
⑥政治の担い手
(第10講)共産主義の展開(池田嘉郎)
1. 名もなき人が英雄になる/2. 共産主義思想/3. ロシア革命/4. 20世紀世界と共産主義
(第11講)立憲政治の地域的差異(金子 肇)1. 近代中国と立憲政治/2. 中国の議会選挙/3. ケルゼンの決意と東アジアの今
⑦近代社会と宗教
(第12講)イスラーム世界と近代化(三浦 徹)
1. 憲法における信教の自由/2. 政教分離と世俗化/3. イスラームにおける政教関係/4. 現代における宗教復興/5. 宗教と向き合う
(第13講)近代日本の「宗教」(畔上直樹)1. 西洋独特の「レリジョン」に面食らう/2.「文明」とレリジョン/3. レリジョンの訳語「宗教」の登場/4. 大日本帝国憲法下のレリジョン/5. 現代日本の私たちとレリジョン

[国際秩序の変化や大衆化と私たち]
⑧ファッションの形成
(第14講)身体装飾の歴史(阿部恒久)
1. ヒゲ無しの近世からヒゲ有りの近代へ/2. 第一次世界大戦後はヒゲ無しが広がる/3. ヒゲ有りとヒゲ無しが共存した軍国主義時代/4. 戦後のサラリーマン世界に広がるヒゲ無し/5. 経済大国化・国際化時代のヒゲの様相
(第15講)ファッションの歴史(平芳裕子)1. 近代化の象徴としてのスーツ/2. 開国後のドレスと大正期の子供服/3. 女性服の変化と洋裁技術の普及/4. 戦時下の国民服ともんぺ/5. 戦後の流行現象と既製服の発達/6. ファッションデザインの発展/7. グローバル化における日本のファッション
⑨「1968年」の広がり
(第16講)民衆運動とプロテスト・ソング(油井大三郎)
1. アメリカの公民権運動とプロテスト・ソング/2. 「ウィ・シャル・オーバーカム」の誕生/3. 「ウィ・シャル・オーバーカム」の日本への越境/4. 結びにかえて
(第17講)人として生きられる社会への希求(荒川章二)1. 成田空港の建設と地元高校生/2.「百姓だって人間だ」/3. 主体性と民主主義
⑩二つの世界大戦
(第18講)兵士たちから見た世界大戦(小野寺拓也)
1. 戦争の世紀と「ふつうの人々」/2. 敵国の住民への憎悪や蔑視/3. 史料の性格について/4.「例外的」な人々をどう考えるか
(第19講)戦争へのプロセス(加藤陽子)1. 戦後の国際秩序の特徴と改造運動の始まり/2. 経済的な国際協調体制/3. 世界恐慌と戦後秩序への挑戦/4. 新しい地域秩序と戦争観

[グローバル化と私たち]
⑪カタストロフの心性
(第20講)災害をめぐる民衆心理(大門正克)
1. 阪神・淡路大震災/2. 関東大震災/3. 阪神・淡路大震災とそれ以前の地域社会──1970・80年代/4. グローバル化のなかで
(第21講)感染症への認識(福士由紀)1. グローバル化と感染症/2. 医学・公衆衛生と感染症/3. 近代日本のコレラと民衆
⑫移民
(第22講)日本からの移民(今泉裕美子)
1. 太平洋島嶼への渡航から始まる日本の海外移民/2. 赤道以北ドイツ領太平洋諸島の占領と日本からの移民の始まり/3. 委任統治と移民/4. 本籍地別人口にみる移民の特徴と植民地社会/5. 移民と現地住民/6. 「海の生命線」としての開発と移民/7. 日米開戦から米軍による占領、引き揚げへ/8. 「南洋群島」を抱え、戦後を生きる
(第23講)移民国家アメリカの二つの顔(貴堂嘉之)1. 坩堝のアメリカ──移民が海を渡る理由/2. 移民国家の法制度と移民排斥運動/3. 連邦移民出入国管理での移民たち──東海岸のエリス島と西海岸のエンジェル島/4. 移民制限の時代へ──移民政策海外への影響
⑬冷戦下の国際社会
(第24講)キューバ危機(上 英明)
1. 冷戦とは何か/2. 脱植民地化と冷戦/3. キューバ危機への道/4. ケネディ神話という歪んだ記憶/5. 危機の本質とは──暴発の危険/6. 危機の教訓──核エネルギーと人間
(第25講)人の自由移動と冷戦体制の終わり(伊豆田俊輔)1. 人の自由移動と世界史のつながり/2. 国際関係の変動/3. 市民社会の再生/4. 移動の自由の進展? それとも後退?
⑭植民地支配の問い直し
(第26講)アメリカの公民権運動(中條 献)
1. 奴隷制廃止後の人種隔離と差別/2. 運動の高まりと非暴力直接行動/3. 運動の新たな局面/4. 大衆の運動/5. グローバルな視点/6. 現代社会とマイノリティ
(第27講)パレスチナ問題(鈴木啓之)1. 帝国の解体と地域の再編/2. シオニズムと植民地主義/3. 中東の脱植民地化/4. 国際社会とパレスチナ人/5. オスロ合意の署名と遠い和平/6. より望ましい解決を探して
⑮グローバル化と地域
(第28講)アメリカの環境運動(小塩和人)
1. 化学物質は健康を守るのか/2. 消費者保護か生産者保護か/3. 環境保護はだれを守るのか/4. 環境正義とは何か/5. 二つの潮流は交わるのか
(第29講)震災からの地域復興(岡田知弘)1.「災害列島」と「災害の時代」/2. 国際的支援と米軍による「トモダチ作戦」/3.「創造的復興」の帰結/4. 被災地の現場で/5.「復興〈災害〉」を超えて

[教室から考える「歴史総合」の授業]
(補講①)いまを主体的に問う(米山宏史)
1. 「歴史総合」のねらいと可能性/2. 近代国民国家の同化政策・内国植民地化を考える──諸事象の比較・つながり/3. 近代化と宗教から、政教分離と信教の自由を考察する──自己との関わり、意志決定/4. 兵士の視点から戦場をとらえ、戦争を理解する──当事者の眼で歴史の現場を直視する/5. アメリカの公民権運動から差別の実相と人間の尊厳を学ぶ──現在とのつながり/6. パレスチナ問題の歴史を学び、解決方法を探る──諸事象の推移、現在とのつながり
(補講②)生徒の関心から問う(田中元暁)はじめに/1. 既成の価値観を揺さぶる/2. 女性/3. 身近なところから/4. 比較の視点
(補講③)図像史料を読み取(塚原浩太郎)

シリーズ刊行物

日本史史料歴史学研究会 編
世界史史料歴史学研究会 編
日本史講座歴史学研究会・
日本史研究会 編
歴史学の現在 歴史学研究会 編
港町の世界史 歴史学研究会 編
地中海世界史 歴史学研究会 編
日本史年表 歴史学研究会 編
世界史年表 歴史学研究会 編
現代歴史学の成果と課題 歴史学研究会 編

その他の刊行物

2020年12月刊行『コロナの時代の歴史学』歴史学研究会編
中澤達哉・三枝暁子監修
2019年05月刊行『歴史を未来につなぐ
 ――「3・11からの歴史学」の射程』
歴史学研究会編
2019年02月刊行『天皇はいかに受け継がれたか
 ――天皇の身体と皇位継承』
歴史学研究会編
加藤陽子責任編集
2018年12月刊行『創られた明治、創られる明治
 ――「明治150年」が問いかけるもの』
日本史研究会・歴史科学協議会・
 歴史学研究会・歴史教育者協議会編
2017年05月刊行『歴史を社会に活かす
 楽しむ・学ぶ・伝える・観る』
歴史学研究会編
2015年05月刊行『歴史学と、出会う
  ――41人の読書経験から』
歴史学研究会編
2014年12月刊行『「慰安婦」問題を/から考える
 ――軍事性暴力と日常世界』
歴史学研究会・
日本史研究会編
2014年10月刊行『史料から考える 世界史20講』歴史学研究会編
2013年05月刊行『歴史学のアクチュアリティ』歴史学研究会編
2012年12月刊行『証言 戦後歴史学への道』歴史学研究会編
2012年05月刊行『震災・核災害の時代と歴史学』歴史学研究会編
2007年02月刊行『歴史学研究』別冊 総目録・索引
 1933年(NO.1)~2006年(NO.822)
歴史学研究会編
2005年08月刊行『歴史研究の現在と教科書問題
 ――「つくる会」教科書を問う』
歴史学研究会編
2004年11月刊行『歴史教科書をめぐる日韓対話
 ――日韓合同歴史研究シンポジウム』
歴史学研究会編
『岩波デジタル歴史年表』歴史学研究会編
2002年12月刊行『戦後歴史学を検証する
 ――歴研創立70周年記念-』
歴史学研究会編
2001年11月刊行『歴史家のよむ「つくる会」教科書
 ──その“おもしろさ”の内幕』
歴史学研究会編