「即位の礼」と大嘗祭に対する抗議声明

 日本国憲法下で2回目となる「即位の礼」と大嘗祭が目前に迫っている。
 明治以降初めてとなる天皇の譲位のきっかけは、2016年8月のいわゆる「天皇のビデオメッセージ」にある。現天皇の「発意」を受けて、政府が有識者会議を開き、天皇の意思を忖度するかたちで事態が進行していった。しかし、そもそもこのような事態こそ、天皇の政治的関与を禁じた日本国憲法第4条に抵触するといわざるをえない。
 同様に批判すべきは、皇室典範問題である。現行の皇室典範に規定がないために、天皇はどんなに高齢であっても譲位ができないということが問題であるならば、国会の審議を経て皇室典範自体を改正すべきである。しかし、政府・与党は現天皇一代限りの特例法ですませることを主張し、皇室典範改正を主張する野党との妥協の結果、皇室典範と「一体をなす」特例法の制定という不当な政治決着で本件の幕を引いたのである。
 こうして、特例法の可決・成立ならびに天皇「退位」の日を定める政令が公布された結果、本年4月30日に現天皇が譲位する見込みとなった。その後、5月1日に「剣璽等承継の儀」と「即位後朝見の儀」が、10月22日に「即位礼正殿の儀」と「祝賀御列の儀」が、10月22日から複数回の「饗宴の儀」が、一連の「即位の礼」として挙行されることが決定され、11月14-15日には大嘗祭が執り行われることとなった。
 神器の継承儀式である「剣璽等承継の儀」と、天皇が檀上から「おことば」を読み、国民の代表である内閣総理大臣がそれに対して事実上の「奉答」を行う「即位後朝見の儀」は、ともに憲法の定める国民主権原理と政教分離原則に照らして疑義が呈されている。それにもかかわらず政府は、十分な国民的合意を欠いたまま、国事行為としてこれらの儀式を強行しようとしている。
 なお、前回1990年11月の「即位の礼」・大嘗祭のとき政府は、一連の行事のうち、束帯を着て高御座に昇った天皇が即位を内外に宣言する「即位礼正殿の儀」、オープンカー・パレードである「祝賀御列の儀」、4日間にわたって開かれる晩餐会「饗宴の儀」の3つの儀式のみを国事行為として、それ以外は「皇室の公的行事」として便宜的につかいわけることで、政教分離違憲行為に抵触することを巧妙に避けようとした。しかしながら、この「皇室の公的行事」のなかには、きわめて宗教的色彩の濃い神事である大嘗祭も含まれており、それにも国の公金が支出されるなど、日本国憲法第20・89条などで定める政教分離原則に明らかに違反する行事が執り行われたのである。
 そして今回も、「即位礼正殿の儀」、「祝賀御列の儀」、「饗宴の儀」と大嘗祭に関して、政府は前回を踏襲する方針をとっている。つまり、国事行為と「皇室の公的行事」とでつかいわけつつ「即位の礼」・大嘗祭をおこない、神事=宗教儀式である大嘗祭に国の公金を投入しようとしているのである。宮内庁の発表によると、大嘗祭にかかる費用として来年度予算案に、公費にあたる「宮廷費」としておよそ18億円が盛り込まれ、総費用は27億円にものぼるという。
 以上、天皇の「発意」から始まり、現天皇の譲位、新天皇の「即位の礼」と大嘗祭をめぐる事態の進行をみるとき、日本国憲法の規定する天皇の政治的関与の禁止、政教分離原則、ひいては国民主権原理がふみにじられていることに強い危機感と、憤りを感じざるをえない。憲法の原則に反する儀式を含む「即位の礼」ならびに大嘗祭が行われようとすることに対して、本会は断固抗議する。

2019年2月8日                     歴史学研究会委員会