百舌鳥・古市古墳群の世界文化遺産推薦に関する見解

 2018年9月28日

大阪歴史学会 京都民科歴史部会 古代学研究会
 史学会 地方史研究協議会 奈良歴史研究会
 日本考古学協会 日本史研究会 日本歴史学協会
文化財保存全国協議会 歴史科学協議会
 歴史学研究会 歴史教育者協議会

 私たちは、宮内庁が所管する陵墓のうち、とくに3世紀から7世紀に築かれた古墳について、近代以降、皇室の墳墓として管理や祭祀が行われている一方、国民共有の重要な歴史文化遺産であることから、その保存と公開を求め活動を行ってきました。1970年代以来の40年以上にわたる活動を通じて、宮内庁が実施する整備工事や事前調査の公開が定着することとなりました。また、宮内庁との意見交換を重ね、社会への学術的知見の還元、関係機関への要望などを行ってきました。
 このたび2018年1月31日に、日本政府は、5世紀代の百舌鳥・古市古墳群を世界文化遺産に推薦しました。今後、専門家団体であるICOMOSの審査が予定され、2018年9月には現地調査が行われるとのことです。百舌鳥・古市古墳群は世界文化遺産にふさわしいものであり、世界的に認知されることは、私たちが求めてきた保存や公開の進展にもつながるものと考えられ、登録に期待を寄せています。また、推薦に尽力された関係機関・関係者に敬意を表したいと思います。その上で、私たちは、下記の2点について課題や問題があると考えます。
 まず、陵墓の保存や公開についての課題です。百舌鳥・古市古墳群の主要な構成資産の多くが宮内庁の管理する陵墓であり、基本的に非公開となっています。また、これら陵墓のほとんどは全域を一元的に保存する形になっておらず、宮内庁管理地とその外側に区分されています。私たちは2013年に、宮内庁と文化庁に対し、地元自治体との連携を進め、一体的な保護対策や公開の推進を要望しました。とくに公開性については、陵墓であることとのバランスに配慮しながら、より公開度の高い構成資産となるよう、関係機関における継続的な努力を望みます。
 次に構成資産の名称の問題です。例えば、百舌鳥古墳群にある日本で最も大きい前方後円墳について、宮内庁は「仁徳天皇 百舌鳥耳原中陵」としており、世界文化遺産推薦に際しての構成資産名は「仁徳天皇陵古墳」が採用されています。しかし、仁徳天皇とされる倭国王の墳墓とみることへの疑問は早くから指摘されています。学術的に被葬者が確定していないなかで、名称に特定の被葬者名を付すことは誤った理解を導く可能性があるため、学術用語として「大山(もしくは大仙・大仙陵)古墳」が提言され、いまでは教科書等においても「大山古墳」や「大仙古墳」などと「仁徳天皇陵古墳」などを併記することが定着しています。「仁徳天皇陵古墳」という構成資産名は、便宜的なものとされていますが、やはり被葬者が認定されているように理解される危惧を覚えます。
 以上、百舌鳥・古市古墳群の世界文化遺産登録への期待を表明するとともに、「人類全体のための世界の遺産」にふさわしいものとするための見解を表明します。

1.構成資産の十分な保存・管理を図り、公開を原則とした活用がなされること。
2.構成資産名については、学術的な観点にもとづくものとすること。