公文書の改竄・隠蔽に抗議し、適切な作成・管理・保存・公開のための制度改革を求める決議

 今年に入って国の公文書の改竄や隠蔽の事例が次々に明らかになった。3月には森友学園への国有地売却に関する財務省の決裁文書から交渉の経緯などが削除されていたことが発覚した。4月には防衛省が「存在しない」としていた自衛隊のイラク派遣と南スーダン派遣の日報が相次いで「発見」され、イラク派遣の日報にいたっては、1年前に「発見」されていたにもかかわらず、防衛大臣に報告されていなかった事実も明るみに出て、文民統制に重大な疑義を生じさせている。
 2011年4月に施行された「公文書の管理に関する法律」(公文書管理法)は、その第一条でその目的を「国及び独立行政法人等の諸活動や歴史的事実の記録である公文書等が、健全な民主主義の根幹を支える国民共有の知的資源として、主権者である国民が主体的に利用し得るものであることにかんがみ、国民主権の理念にのっとり、公文書等の管理に関する基本的事項を定めること等により、行政文書等の適正な管理、歴史公文書等の適切な保存及び利用等を図り、もって行政が適正かつ効率的に運営されるようにするとともに、国及び独立行政法人等の有するその諸活動を現在及び将来の国民に説明する責務が全うされるようにすること」とし、第四条で「行政機関の職員は、第一条の目的の達成に資するため、当該行政機関における経緯も含めた 意思決定に至る過程並びに当該行政機関の事務及び事業の実績を合理的に跡付け、又は検証することができるよう、(中略)、文書を作成しなければならない。」と定めている。今回の行為は、この法律の趣旨に反し、民主主義の根幹を揺るがす、国民への背信行為であり、これに対して私たちは強く抗議するとともに、調査と責任追求のための第三者機関の設置を含む、徹底した真相究明を要求する。
 公文書は国民の財産であるとともに、将来の歴史研究にとっての欠くことのできない貴重な資料でもある。歴史学研究会は、公文書管理法制定に際し、歴史学関係諸団体とともに内閣総理大臣、所管大臣をはじめとする政府関係者に対し陳情書や要望書を提出してきた。具体的に振り返っておけば、政府の「公文書管理の在り方等に関する有識者会議」の最終報告書が提出された際には、2008年11月に「公文書管理法制定についての陳情書」を、国会での審議が本格化した折には、2009年3月に「公文書等の管理に関する法律(公文書管理法)政府案に対する要望書」を、法律制定後の2009年12月には「公文書管理法の施行に関する要望書」を提出してきた。
 これらの中で要望した、国立公文書館等の公文書管理を担う機関の政府からの独立性の確保、予算及び人員の拡充、国立公文書館による公文書の一元管理と中間書庫の設置、作成後30年経過したすべての公文書の原則公開と不開示濫用を回避する仕組みの導入、資料の電子化などは、その一部は文書管理法成立時の国会決議に謳われたものの、内閣はその実現化に向けた対応をとってこなかった。とりわけ今回の改竄・隠蔽では、公文書の移管・廃棄に関する権限を「行政機関の長」に委ね、文書の移管後においても「行政機関の長」が公開・非公開に関わることが可能となっている、公文書管理法の重大な問題点が明らかになったといえる。
 2018年3月、内閣府公文書管理委員会はガイドライン改正案を公開したが、行政文書の定義の精緻化などに留まる微修正では、現在起こっている問題の本質的な解決とはならず、再発防止もおぼつかない。法の目的と文書の作成義務との関係を再考し、第4条修正を視野に入れた法改正が望まれる。公文書の適切な作成・管理・保存・公開が徹底されるよう、公文書管理法の改正を含め、抜本的な制度改革を政府に求めることを決議する。

2018年5月26日    
歴史学研究会総会