「共謀罪」法案に反対する決議


 現在、国会で審議中の「共謀罪」法案については、いくつかの重大な懸念が払拭されていない。第一に、「組織的犯罪集団」という規定が曖昧であり、合法的な集団への拡大が予期されている。第二に、重大犯罪の計画や合意という規定も、これまでの共謀共同正犯を超えて広く認定される可能性がある。第三に、「実行準備行為」という規定も、日常的な監視対象の際限なき拡大につながることが危惧される。

 そもそも、「共謀罪」が小泉内閣時以来、三度にわたって廃案となってきたのは、推定無罪や令状主義、黙秘権、責任主義など、長年にわたって作り上げられてきた日本の刑事司法の基本原理から見ても問題点を払拭できない法案であったからに他ならない。今般の「共謀罪」も、このような問題点を免れるものではない。それゆえ、50を超える地方議会が反対や慎重審議を求める意見書を可決したり、ジョゼフ・カナタチ国連特別報告者が安倍首相宛てに書簡を送り、「プライバシーや表現の自由を制約するおそれがある」と指摘したように、内外で強い懸念や反対の動きが広がっているのは当然であろう。

 私たちは歴史学を学ぶものとして、治安維持法の歴史を想起せざるをえない。同時に、私たちは、21世紀になって組織的暴力のあり方がどう変化し、それを防止する国際的枠組みはどのようなものであるべきか、また、他ならぬ日本で、「共謀罪」という形態がいまなぜ繰り返し持ち出されているのか、を歴史的に検証する責務を負っている。

 「共謀罪」法案は、社会のあり方について議論する環境や雰囲気を萎縮させるものであり、廃案とするのが至当である。

2017年5月27日
歴史学研究会総会