吉見義明氏の名誉毀損に関わる裁判の公正な判決を求める決議

東京地方裁判所 民事第33部 合議1E係 御中

吉見義明氏の名誉毀損に関わる裁判の公正な判決を求める決議

2013年7月26日、日本軍「慰安婦」研究の第一人者である中央大学の吉見義明教授が、日本維新の会所属(当時)の桜内文城衆議院議員(当時)を、名誉棄損で貴庁に提訴した裁判が結審し、2016年1月20日に判決が言い渡されるはこびとなりました。
問題の発端は、2013年5月27日に日本維新の会共同代表(当時)の橋下徹大阪市長(当時)が日本外国特派員協会でおこなった、「慰安婦」問題発言などに関する釈明の記者会見に同席していた桜内氏の発言です。司会者が参考文献として吉見氏の著書を紹介した際、桜内氏は、「これはすでに捏造であるということが、いろんな証拠によって明らかとされております」と述べました。
前後の文脈から、桜内氏が吉見氏の著書を「捏造」と侮辱したことは明白です。しかし、桜内氏は公判で、「捏造」と述べたのは「sex slavery(性奴隷)」という概念に対してであると、論点をすり替えようとしました。桜内氏側の戦略は、「性奴隷」という一般には馴染みの薄い用語に世間の耳目を集め、今日の日本社会に蔓延する排外主義的風潮に便乗することで、自らの過ちを隠蔽するとともに、実証的に積みあげられてきた歴史研究の成果を虚偽だと印象づけようとするものとみえます。保身のために、論点をすり替え、「慰安婦」問題の解決を遠ざける桜内氏らの行為は、国際社会においても、受け入れられるものではありません。
桜内氏の発言とその弁明の論理は、昨今、日本社会の一部にみられる、「慰安婦」問題についての誤った認識や、被害者の名誉を傷つける悪質な宣伝を拠り所としています。その背景には、過去の植民地支配や侵略戦争の過ちから目をそむけ、被害者に責任を転嫁することで自らを正当化しようとする歪んだ歴史認識があります。万一、裁判で桜内氏が主張する理屈が通ってしまえば、「慰安婦」問題の本質を歪曲しようとする歴史修正主義の主張に、司法が「お墨付き」を与えることになりかねません。
私たちは「慰安婦」問題の根本的解決が、過去の日本の過ちを正し、近隣諸国との真の和解を成し遂げるために不可欠であるとの認識に立ち、また日本における学問研究の自由を守る意味からも、司直には正義と良識にもとづいた公正な判決を下されることを、強く求めます。

歴史学研究会委員会
2015年12月11日