公文書管理法の施行に関する要望書

内閣府特命担当大臣(行政刷新担当) 仙谷由人殿
社会民主党党首 福島瑞穂殿
国民新党代表 亀井静香殿

公文書管理法の施行に関する要望書

◇要望事項
1.内閣府大臣官房公文書管理課及び国立公文書館への予算及び人員の拡充
2.国立公文書館が一元的に管理する中間書庫の設置
3.国立公文書館、外務省外交史料館、宮内庁書陵部における開示基準の統一化、及び「三十年公開原則」の導入
4.行政機関職員の意思決定過程に係る文書作成義務の徹底化
5.行政文書ファイル名の付け方の改善
6.電子アーカイブズのさらなる進展
7.立法府公文書の保存及び公開手続きの実施
8.地方自治体等が設置する公文書館設立への予算的支援

◇要望の趣旨
1.現在、内閣府大臣官房公文書管理課の職員は10名、国立公文書館の職員は42名である。この職員数では、毎年保存期間が満了となる10数万件の文書を 移管・選別・保存を滞りなく実行することすら物理的に不可能である。そのため、公文書管理法の施行される2011年4月までに大幅な予算及び人員の拡充を 要望する。
特に、国立公文書館では今年度11名の公文書専門員を採用したが、いずれも1年契約の非常勤職員であり、長期的な視野に立った人材育成には相応しくない雇 用形態である。よって、できるかぎり多くの常勤職員の採用と人材育成への取り組みを要望する。「公文書管理の在り方等に関する有識者会議」の「最終報告」 (2008年11月4日)においても、将来的には「数百人規模」の人員を配置すべきであるとの答申が出されており、長期的視野に立った人員の拡充が行われ ることが望ましい。(衆議院附帯決議第二、六項、参議院附帯決議第五、十三、十九項)

2.公文書管理法第六条に基づき、国立公文書館が管理に参与する中間書庫の設置を要望する。中間書庫は保存期間中の公文書の散逸を防ぐためだけでなく、期 間満了後の移管・廃棄をスムーズに行うためにも必要な施設である。すでに神奈川県において、公文書館が中間書庫を管理する仕組みが導入されており、このよ うな先進事例を参考にして導入が図られるべきである。将来的には中間書庫が国立公文書館によって一元的に管理されることが望ましい。(衆議院附帯決議第三 項、参議院附帯決議第四項)

3.保存期間満了後の公文書の移管に関して、外務省と宮内庁については自省庁内の公文書管理機関に移管することが認められている。しかし、これら省庁内の 公文書管理機関においては、その他の省庁等の公文書の移管先である国立公文書館とは文書の開示基準が異なっており、公文書の一元的管理という観点から大き な問題が生じることとなる。公文書の管理は一定のルールによってなされるべきであり、その公開基準についても統一したルール制定がなされることが求められ る。
なおその際には、国際文書館評議会(ICA)の「マドリッド原則」に基づき、作成後30年経過した公文書については原則的に公開することとし、公文書管理 法第十六条の規定による不開示の濫用をできうるかぎり回避するような仕組みを作ることを要望する。(衆議院附帯決議第八、十、十五項、参議院第九、十、十 一項)

4.これまで、国立公文書館に移管された公文書の多くは決裁文書に限られ、政策決定過程に係る文書の多くが廃棄されてきた。その状況を改善するために、公 文書管理法の第四条では、具体的に作成しなければならない文書の類型を列挙し、意思決定過程などの重要な文書の作成を義務づけた。
ただし、これはあくまでも「守られ」なければ意味をなさない。よって、この規定にある文書の作成を徹底するための研修の充実化と、実際に作成されているか を監視する仕組みを構築することを要望する。(衆議院附帯決議第四項、参議院附帯決議第二項)

5.公文書管理法をめぐる国会審議でも何度も取り上げられたように、各省庁の行政文書ファイル管理簿に登載されているファイル名が抽象的であり、公文書検 索の際に混乱を生じさせている。よって、簿冊内容に即した適切なファイル名を付けるような指導を徹底すること、さらには、「メタデータ」(キーワード)な どを附すといったような、市民からの情報アクセスを行いやすくするシステムの構築が行われることを要望する。

6.資料の電子化は、地方や外国に在住している利用者の利便性を向上させ、学問の発展に非常に寄与している。これまで、アジア歴史資料センターを中心とし て、多くの重要資料が電子化されており、さらに継続的に本政策が推進されることを要望する。(衆議院附帯決議第十一項、参議院附帯決議第七項)

7.今回の公文書管理法はあくまでも行政府の公文書の管理を定めたものにすぎず、附則第十三条第二項では、立法府と司法府の公文書管理のあり方について検 討が行われることが定められている。なお、司法府については、8月5日に裁判所の歴史的公文書を国立公文書館に移管することが決定した。
しかし、立法府については、情報公開請求制度すら衆議院の一部の文書(議院行政文書)以外は対象としておらず、公文書管理の面から見ても明らかに行政府と 比較して遅れが目立っている。立法府の公文書は、議会制度の歴史を研究する上でも非常に重要な歴史資料であり、公文書管理について、できる限り早く具体的 な制度の検討がなされることを要望する。

8.公文書管理法第三十四条には、地方公共団体が、文書の適正な管理への施策を策定し実施するよう務めなければならないと規定されている。現在、地方公共 団体に設置された公文書館の数は、都道府県30館、政令指定都市7館、市区町村16館にすぎない。このままでは、多くの地方公共団体の歴史的公文書が散逸 する危険性が高いといわざるをえない。
そのため、地方公共団体に対して、公文書管理制度の導入を奨励するために、財政的支援を行うことを要望する。(衆議院附帯決議第十四項、参議院附帯決議第 十五、十六項)

参考資料
【衆議院】公文書等の管理に関する法律案に対する附帯決議
二 公文書等の管理に関する施策を総合的かつ一体的に推進するための公文書管理担当機関の在り方について検討を行うこと。
三 行政文書の管理が適正に行われることを確保するため、一定の期間が経過した行政文書に関しその保存期間満了前に一括して保管等の管理を行う制度(いわ ゆる中間書庫の制度)を各行政機関に導入することについて検討を行うこと。
四 国民に対する説明責任を果たすため、行政の文書主義の徹底を図るという本法の趣旨にかんがみ、軽微性を理由とした恣意的な運用のなされることのないよ う、万全を期すること。
六 公文書の適正な管理が、国民主権の観点から極めて重要であることにかんがみ、公文書管理に関する職員の意識改革及び能力向上のための研修並びに専門職 員の育成を計画的に実施すること。また、必要な人員、施設及び予算を適正に確保すること。
八 国立公文書館等へ移管された特定歴史公文書等に対する利用制限については、利用制限は原則として三十年を超えないものとすべきとする「三十年原則」等 の国際的動向・慣行を踏まえ、必要最小限のものとすること。
十 特定歴史公文書等の利用請求及びその取扱いにおける除外規定である本法第十六条に規定する「行政機関の長が認めることにつき相当の理由」の有無の判断 に関しては、恣意性を排し、客観性を担保する方策を検討すること。
十一 特定歴史公文書等の適切なデジタルアーカイブ化を推進し、一般の利用を促進すること。
十四 一部の地方公共団体において公文書館と公立図書館との併設を行っていることを踏まえ、これを可能とするための支援を検討すること。
十五 宮内庁書陵部及び外務省外交史料館においても、公文書等について国立公文書館と共通のルールで適切な保存、利活用が行われるよう本法の趣旨を徹底す ること。

【参議院】公文書等の管理に関する法律案に対する附帯決議
二、国民に対する説明責任を果たすため、行政の文書?義の徹底を図るという本法の趣旨にかんがみ、外交・安全保障分野も含む各般の政策形成過程の各段階に おける意思決定に関わる記録を作成し、その透明化を図ること。また、軽微性を理由とした文書の不作成が恣意的に行われないようにするとともに、文書の組織 共用性の解釈を柔軟なものとし、作成後、時間を経過した文書が不必要に廃棄されないようにすること。
四、行政文書の管理が適正に行われることを確保するため、作成から一定期間が経過した行政文書をその保存期間満了前に一括して保管等の管理を行う制度(い わゆる中間書庫の制度)の各行政機関への導入について検討を行うこと。
五、保存期間の満了により廃棄される行政文書の量が膨大なものであることを踏まえ、廃棄に係る行政文書の内容の審査等に要する内閣総理大臣の補佐体制を強 化すること。
七、特定歴史公文書等の適切なデジタルアーカイブ化を推進し、一般の利用を促進すること。
九、国立公文書館等へ移管された特定歴史公文書等に対する利用制限については、利用制限は原則として三十年を超えないものとすべきとする「三十年原則」等 の国際的動向・慣行を踏まえ、必要最小限のものとすること。
十、特定歴史公文書等の利用請求及びその取扱いにおける除外規定である本法第十六条に規定する「行政機関の長が認めることにつき相当の理由」の有無の判断 に関しては、恣意性を排し、客観性と透明性を担保する方策を検討すること。
十一、宮内庁書陵部及び外務省外交史料館においても、公文書等について国立公文書館と共通のルールで適切な保存、利活用が行われるよう本法の趣旨を徹底す ること。
十三、公文書の適正な管理が、国民主権の観点から極めて重要であることにかんがみ、職員の公文書管理に関する意識改革及び能力向上のための研修並びに専門 職員の育成を計画的に実施するとともに、専門職員の資格制度の確立について検討を行うこと。また、諸外国における公文書管理体制の在り方を踏まえ、必要な 人員、施設及び予算を適正に確保すること。
十五、本法の趣旨を踏まえて地方公共団体における公文書管理の在り方の見直しを支援し、また、国立公文書館と地方公文書館との連携強化を図ること。
十六、一部の地方公共団体において公文書館と公立図書館との併設を行っていることを考慮しつつ、より多くの公文書館が設置されることを可能とする環境の整 備について検討すること。
十九、公文書等の管理に関する施策を総合的かつ一体的に推進するための司令塔として公文書管理に係る政策の企画・立案及び実施を担当する部局及び機構の在 り方について検討を行うこと。

2009年12月7日    

(注)歴史学関係16団体
 大阪歴史科学協議会 史学会 ジェンダー史学会 社会経済史学会
 総合女性史研究会 東京歴史科学研究会 奈良歴史研究会 新潟史学会
 日本史研究会 広島史学研究会 北海道歴史研究者協議会 
 宮城歴史科学研究会 歴史科学協議会 歴史学研究会 歴史教育者協議会
 歴史資料ネットワーク