大学入試センター問題作成委員の氏名公表問題についての声明

 新聞報道によると、2004年度大学入試センター試験の世界史試験問題のなかに朝鮮人「強制連行」を正解選択肢とする問題があったことに端を発して、「新しい歴史教科書をつくる会」や一部国会議員などが文部科学省・大学入試センターに圧力をかけた結果、文部科学省は大学入試センター教科科目第一委員会委員の氏名を任期終了後に公表する方針を固めたもようである。しかし、この措置には重大な問題が含まれている。
 第一に、センター試験の問題は、いずれも学習指導要領、高校教科書の記述内容、学界における研究状況などをふまえつつ、委員会での集団討議を経て作成されており、委員個人の見解にもとづくものではない。そして、今回の出題内容にも何ら非難されるべき点はない。このように問題作成が委員会全体の責任において行われている以上、個々の委員名の公表は適切な措置とはいえない。
 第二に、委員の氏名公表により、個々の問題の内容を特定の委員と結び付けて議論する傾向が生じ、その結果委員が精神的苦痛を被ることが懸念される。そのようなことになれば、後任委員の引き受け手も少なくなり、問題作成に支障が生じる恐れがある。
 第三に、委員の氏名公表は、予備校などの受験産業関係者が退任後の委員に接触して情報収集を行ったり、現職委員の構成を推定したりすることにつながりかねない。こうしたことを通じて入試問題の内容がある程度推測できるようなことになれば、機密性と公平・公正性を旨とする問題作成の根幹が脅かされることになろう。
 上記の理由により、われわれは文部科学省・大学入試センターに対して、委員の氏名公表を行わないよう強く求めるものである。

  2004年3月26日
  歴史学研究会委員会