都立4大学の廃止と石原都知事による「新構想」に対する抗議声明

東京都知事 石原慎太郎 殿
東京都大学管理本部長 山口一久 殿

 東京都は、石原慎太郎東京都知事のもと、2001年7月に都立4大学(東京都立大学・科学技術大学・保健科学大学・都立短期大学)の統合を推進する東京都大学管理本部を都庁内に設置し、同年11月には「東京都大学改革大綱」を発表した。これ以降、「東京都大学改革大綱」に沿った形で、大学管理本部と都立4大学との間で新しい大学のあり方について協議が重ねられてきた。しかし本年6月、突如として大学管理本部長が更迭され、さらに8月1日、都は自ら決定した「大学改革大綱」を何ら正当な根拠もなく突然覆した。これまでの検討体制が7月31日をもって廃止されたことを一方的に宣言し、また、それまで自らも参加して練ってきた構想を破棄して「都立の新しい大学の構想について」(以下、「新構想」)を発表したのである。
 8月1日以降の「新大学」の検討体制には、科学技術大学学長・保健科学大学学長・都立大学の各学部長・研究科長に対して「参加」が要請された。しかし大学管理本部は、それら学長・学部長は、「資源」としての既存の大学をよく知る個人の資格でのみ「参加」を許すとし、したがって、学部などからの意見を反映させることはおろか、検討の様子についても学内に一切公表しないことを求める、という強圧的な手段を用いた。さらに都は、都立4大学の教員全てに対し、「新構想」に包括的に賛成し、教員配置や詳細設計の内容について一切口外しないことを約束させる「同意書」の提出を要求し、「新構想」を強権的に進めようとしている。
 以上の動向は、「設置者権限」を大きく逸脱した非民主的なやり方であるのみならず、教職員・学生・院生の権利を完全に踏みにじるものである。また憲法・教育関連諸法規の認める学問の自由、大学の自治を侵すものである。民主的な法治国家である日本においては、このような蛮行は許されず、絶対に看過することはできない。
 また、以上の手続き上の問題に加え、現在示されている「新構想」の中にも重大な問題がある。
 「新構想」では、人文学部は他学部(理学部・工学部など)とともに都市教養学部に包摂され、現・人文学部に存在する英文・国文・仏文・独文・中文の文学科各専攻は消滅する。このような「新構想」が実現すれば、大学が社会的責任として担う教養教育において大きな位置を占める人文科学系の諸分野は、見る影もなく荒廃する。さらに「新構想」では、人文科学系の教員定数は現定員の半数以下という、他の学部・学科に比して極端な削減が予定されている。こうした事態が現実のものとなれば、人文科学系学科の修士・博士課程の設置に必要な教員定数を満たすことが難しくなり、大学院生の中には学業半ばで道を完全に失う者が出てくることは必至である。
 さらに、上記のような東京都主導の強圧的・独断的な大学の再編がこのまま見過ごされた場合、独立法人化を目前にした他の国立大学をはじめ、日本全国の大学の「改革」に悪影響を及ぼすであろう。このことは、人文科学系の学術に大きな打撃を与えるものであるばかりでなく、この国の「知」のあり方全体を根底から崩壊させるものである。これは、都立4大学だけの問題ではない。「改革」に名を借りた「知」の破壊である。
 以上の三点から、本会は、現在、東京都によって進められている強圧的・強権的な大学の破壊を断じて容認しない。ここに、強く抗議する。 以上

2003年10月24日

歴史学研究会委員会