歴史研究者は、アメリカの対イラク戦争に反対し、問題の平和的解決をのぞむ!

 歴史を学び、歴史から学ぶ者は、歴史上には多くの戦争があり、数しれない人びとが命を落してきたことを知っています。戦争が歴史の転換になったり、時代を画する出来事になったりしたこともあります。戦争が航空機の発展やコンピュータの発明につながり、技術の進歩に寄与したという意見もあります。戦争が国の独立や地域の解放をもたらしたという解釈もありうるでしょう。それにも拘わらず、歴史上、戦争は普通の人びとの苦しみをともない、多くの犠牲を強いてきたことは否めません。ましてや、大国がその力を背景に他国を侵略した戦争が人びとに幸せをもたらしたことは一度もありませんし、それはいかなる口実をもうけようと「正義」ではありません。

 アメリカとイギリスは、日本時間の3月20日にイラクに対して戦争をしかけました。その理由は、大量破壊兵器を所有するとされるイラクのフセイン独裁体制の打倒と、イラクの「民主化」であり、国連安保理決議1441に基づくものであるとされました。しかし、この決議に基づく国連の査察団の報告からは、そうした結論を導き出すことはできません。ですから、アメリカとイギリスの行動は、国連全体や安保理の多数の意見を無視するだけではなく、平和的解決をのぞむ世界の世論を納得させるものではありません。それどころか、アメリカとイギリスの行為は、第一次世界大戦後の国際連盟の苦い経験や、第二次世界大戦後の国際連合の成果、さらに世界中の人びとが営々と築いてきた平和への努力を踏みにじるものでしかありません。

 サダム・フセインが立派な統治者であるというわけではありません。彼がおこなってきたことは、世界の趨勢からいっても決して許容できることではありません。しかし、アメリカ大統領ブッシュがとったやり方は、こうした問題を解決してきたこれまでの国際的な方法を逸脱し、国際法に反するものでしかありません。そうした行為に対して、日本の小泉首相は、日本国民の意見も集約することなくただちに賛成を表明し、軍事的にもこれに協力してきました。そうした行為は、戦争放棄を宣言した憲法を持ち、これまで国連尊重の外交政策を標榜してきた第二次世界大戦後の日本の基本姿勢に反するだけではなく、日本国民と世界の平和への願いを踏みにじり、危険な道を歩み出したものといえましょう。

 アメリカ軍はすでにバグダードを軍事的に占拠したと称しています。しかし現在でも、数多くのイラクの市民や子供が犠牲になっており、世界各国のジャーナリストにも死傷者がでています。アメリカ・イギリス軍がさらにイラクの制圧を続けるなら、その被害はさらに拡大することになるでしょう。私たち歴史研究者は、歴史の教訓に反するそうした理不尽で非道な戦争をただちに止めることを強く要求し、歴史に学び、国際世論の声に耳を傾け、問題の平和的解決を望みます。

2003年4月11日
歴史学研究会委員会