民族学校出身者に国立大学の受験資格を認めよ

 文部科学省は、かねてより改善が求められてきた、国内の外国人学校出身者の国立大学受験資格をめぐる問題に関し、欧米系のインターナショナルスクールの卒業生にのみ受験資格を与え、朝鮮学校、韓国学園、中華学校などのアジア系外国人学校(民族学校)には認めない方針を明らかにしました。

 現在、「外国において、学校教育における十二年の課程を修了した者又はこれに準ずる者」には国立大学受験資格が認められています(学校教育法施行規則第69条第1項)。また、すでに半数以上の公立・私立大学は、民族学校を含む外国人学校出身者に受験資格を認めています。にもかかわらず、日本国内にある民族学校で「学校教育における十二年の課程を修了した者」が、国立大学受験を望んだ際、大学入学資格検定規程(大検)への合格が必要条件とされています。この現状自体、法の下の平等に著しく反しています。

 こうした不合理な状況の改善が課題となっているときに、しかも民族学校関係者から強い改善要求が出されているときに、文部科学省が欧米系のインターナショナルスクールにかぎって受験機会の拡大を認めるという「方針」を打ち出したことは、状況の改善に資するどころか、いっそう重大な民族差別を抱えこむことになる愚挙だといわざるを得ません。

 日本政府が1994年に批准した「子どもの権利条約」では、「高等教育を、すべての適当な方法により、能力に基づいてすべての者がアクセスできるものとすること」(第28条)、「民族上、宗教上もしくは言語上の少数者、または先住民が存在する国においては、当該少数者または先住民に属する子どもは、自己の集団の他の構成員とともに、自己の文化を享受し、自己の宗教を信仰しかつ実践し、または自己の言語を使用する権利を否定されない」(第30条)と規定しています。民族学校出身者に国立大学受験資格を認めないことは、明らかに同条約に違反しています。

 しかも文部科学省の「方針」は、「教育の国際化」という趨勢の中で、大学入試センター試験の外国語科目として英・独・仏の他に中国語(1997年度から)と朝鮮語(2002年度から)が設けられてきた流れにも逆行しています。いまここでアジア系外国人学校出身者を排除して、欧米系のインターナショナルスクール出身者だけに受験機会の拡大を認めることは、恣意的な権力の行使であり、アジアの人々との友好を著しく阻害する行為だといわざるを得ません。文部科学省の辞書で「国際化」とは、欧米の人々と席を並べて対話することだけを意味しているのでしょうか。

 歴史学を学ぶ私たちは、今回の「方針」とは、植民地・半植民地支配と侵略戦争という、日本の歴史的責任が問われざるを得ない問題を抱えるアジアとの関係を蔑ろにするものであり、真の「国際化」とは似ても似つかないものだと考えます。もしこのような文部科学省の「方針」を容認するならば、私たち自身がアジア諸民族に対する差別の加担者になってしまうでしょう。そのことに深い危惧の念を抱かざるをえません。

 したがって私たちは、以下のことを文部科学大臣に強く要求します。

一、インターナショナルスクール出身者と同様、民族学校出身者に対しても国立大学への受験資格を認めるための法的措置をとること。
二、一が困難だというのなら、民族学校出身者の受験資格認定は各大学の自主的な判断に任せることを公に声明すること。

2003年3月7日
歴史学研究会委員会