愛媛県教育委員会の扶桑社版『新しい歴史教科書』の採択に抗議し、その撤回と採択のやり直しを強く求める要請書

愛媛県教育委員会教育長殿
愛媛県教育委員会委員長殿

 8月15日、愛媛県教育委員会は来年度新設される中高一貫校で使用する中学社会科教科書として、扶桑社版『新しい歴史教科書』(以下「つくる会」教科書)の採択を決定した。私たち歴史学研究会は、研究者・教育者の立場からこれに抗議し、その撤回と採択のやり直しを強く求めるものである。
 先に謹呈した当会編『歴史家が読む「つくる会」教科書』で指摘したように、私たち歴史家の眼からみると、「つくる会」教科書にはおよそ信じがたい間違いが数多くあり,教科書としての適性を疑わざるをえない。この教科書が授業で使われるならば、教師は間違いや誤解を招くおそれのある個所をいくつも指摘しなければならない。そのような授業で教育への信頼を保てるはずがない。
 また「つくる会」教科書を採択した理由について井関和彦愛媛県教育委員会委員長は、「学習指導要領に最も沿っている」からとしているが、それはおよそ理由として成り立たない。「つくる会」教科書は自国の歴史を手放しで賞賛し、そのマイナス面、問題点には触れないという一面的な叙述に終始している。こうした叙述では、学習指導要領にいう「諸資料に基づいて多面的・多角的に考察」したことにはならない。また事実誤認によって日本がすぐれていると思うことは、真に「我が国の国土と歴史に対する理解と愛情を深め」ることにはならない。ましてこうした自国中心主義とアジア諸国への優越意識は、学習指導要領にいう「国際社会に生きる民主的、平和的な国家・社会の形成者」育成という目標とまったく相反するものである。
 以上2点より私たちは、愛媛県教育委員会の「つくる会」教科書の採択決定に抗議し、ただちにこれを撤回し、改めて民主的手続きにもとづき採択をやり直すことを要請する。

2002年9月20日
歴史学研究会委員会
(『歴史学研究』2002年11月号掲載)