声明 戦後70年を迎え、戦争への道に反対し平和への決意を新たにする決議


  第二次世界大戦の終結から70年を迎え、世界各地で戦没者を追悼し、平和を祈念する行事が続いている。敗戦にいたるまで、日本は、朝鮮、中国、東南アジア、太平洋にわたる広い地域を侵略した。その結果、内外に多くの死傷者を出し、朝鮮・台湾などの植民地を含め、多数の人々を戦争に動員し、「慰安婦」と呼ばれた女性を筆舌に尽くせぬ苦難の下に置いたのをはじめ、各地で甚大な数の犠牲者を生みだした。こうした戦争のはてに、平和主義をかかげる日本国憲法は制定されたのであった。
 だが、現在、安倍晋三政権は、アメリカの強い要求の下に、集団的自衛権を容認して自衛隊の海外派兵を可能にする法改正を推し進め、新たな戦争への道を整えようとしている。沖縄県民の訴えを拒否し、辺野古への米軍基地移転に頑なに固執するのは、日米軍事同盟の再編強化を狙っているからである。安倍政権が狙うもうひとつのことは、「平和」の換骨奪胎をはかることである。「積極的平和主義」の名のもとに、海外の紛争から一定の距離を置いてきた戦後の平和主義を「消極的」と切り捨てる一方で、日米軍事同盟とともにあった戦後日本を「平和国家」と標榜している。
 歴史学研究会は、すでに2014年5月24日に「集団的自衛権」容認に反対する委員会声明を発するとともに、本誌特集「「戦後日本」の問い方と世界史認識―冷戦・脱植民地化・平和―」(2014年7・8月号)や、2014年12月開催の歴研シンポジウム「歴史学の課題としての戦後日本/平和主義―集団的自衛権問題を見すえて―」において、集団的自衛権の問題を歴史的に問い、さらに戦後日本をひろくアジアや世界とのかかわりで検討する必要性を強調してきた。従来の歴史学では、戦後日本の平和を、冷戦や脱植民地化の過程とかかわらせて論じる傾向が乏しかったことへの反省をふまえてのことである。対外侵略に直接かかわる事態こそ回避されてきたとはいえ、沖縄を中心に多くの米軍基地が置かれ、朝鮮戦争、ベトナム戦争、イラク戦争などで米軍の出撃拠点になってきた国を「平和国家」と呼ぶのは適切ではない。
 国際連合の活動をはじめ、世界平和を実現するためのさまざまな努力が積み重ねられてきたにもかかわらず、世界各地で戦火は絶えず、東アジアにおいても国家間の領土・領域をめぐる対立が厳しさを増している。そのような状況を背景に、安倍政権は、集団的自衛権容認をテコに日米軍事同盟の再編強化に乗りだそうとしている。しかし、軍事同盟への依存と軍事力の強化によって平和を実現することができないことは、二度にわたる世界大戦と冷戦の歴史が教えるとおりである。
 私たちは、安倍政権が集団的自衛権を容認し、自衛隊の海外派兵を可能にする法改正を推し進め、新たな戦争への道を整えることに強く反対する。そして、侵略戦争と植民地支配への真摯な反省に基づく歴史学の議論を喚起し、近隣諸国との信頼関係を醸成して、相互理解と話し合いによる平和の実現をめざすことを決意する。

               2015年5月23日
                              歴史学研究会総会